Prologue〜アキ〜 | |
0.コンプレックス | |
世の中、普通に整った顔と身体があれば、それだけで人生の半分以上は得をするんじゃないだろうか?容姿に関しては、人生を普通に過ごす定期券が与えられているんだと思う。 これがその上に、飛び抜けて可愛いかったり、綺麗な人は、さらにお得なクーポン券、特急乗車券やファーストクラスのチケットを手にしているようなものじゃない? そりゃ、綺麗な人にも可愛い人にも悩みはあるだろうと思う。それならブスでデブに生まれ変わりたいだろうか?あり得ないよね... ブスやデブってだけで人生の半分は真っ暗に塗りつぶされる。 告白されることもないし、褒められることもほぼ無い。酷いときには一言で切って落とされかねない。結果がわかってるから、告白する権利さえ貰えないようなものだ。 だから時々、贅沢な言葉を耳にした時はおいおい、って思ってしまう。それ以上望むなんて贅沢だよ?あたしと比べてみてよって... 『あともう少し痩せてたら。もう少し綺麗だったら...』 最低限のモノも持ち合わせていない者からすれば、そんな贅沢すぎる言葉!その少しをこっちに分けて欲しいって切に願ってるって言うのに... そう、整わない顔や体つきを生まれもったあたしたちは普通の定期券が貰えないときがある。それは鈍行各駅停車にしか乗れないチケットだったりする。時々乗車拒否もされたりする、生まれつきのハンデを背負ったような人生。 毎日鏡を見るのも、体重計に乗るのも嫌! せめて中身だけでも心根を高くもとう、優しく心美しくありたいと努力はしてみるけど、容姿コンプレックスから来る皮肉れた精神だけは治せない。 傷つくことに生まれたときから慣れてきた者にとって、相手を傷つけるのはもってのほか。もうその矛先を自分に向けられたくないから、これ以上傷つきたくなくて誰とでも上手くやっていこうとする。肉体的欠陥を口にされても笑って過ごせる様になった。自虐的なことも口に出来る強さは身につけられた。 でも、心はすぐにコンプレックスの塊を飲み込んで消化不良を起こしてしまう。笑ってたって、平気なはず無いじゃない?傷つかないはず、ないじゃない? そんなあたし達にも春は来る。 容姿に関係なく、ブスにな女にも思春期はくる。 人は誰かを好きにならずに居られないんだろうか?それが分不相応であっても。 高くを望まなければ、想いが成就することを望まなければ... やめればいいのに、心だけは止められない。 ああ、神様、ブスでも、人を好きになってもいいのでしょうか? |
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