〜関西物書恋盟バレンタイ企画参加作品〜
明日の土曜はバレンタインだ。
瑠璃もたぶん朝からやってくるんだろうな...
彼女も母親が退院してからはそんなに頻繁にこれなくなった。母親もいちおう仕事にも復帰したみたいだし、医療控除もまたそのうちでるだろう。瑠璃はオレのことを母親にはまだ言ってないみたいだった。そりゃそうだろ。どう考えたって援助交際してるとしか思われないだろうから...事実金銭の関係はあったわけだから(〜バツイチ男の事情〜参照)。
だからうちに来るのはもっぱらバイトに行くまでか、土日になる。その間に料理とか掃除とかしていってくれるから、オレもつい甘えてしまってる現状。
バレンタインなんて、毎年義理チョコもらって、ホワイトデイにお返しをしなきゃならない。サラリーマンなんてつまらない風習に惑わされてないか?妻がいる間は、それでもお返しの準備なんかは全部やってくれたし、もらったチョコも子供と一緒に食べてくれていたけれど、別れてからは食べもしないチョコの山にため息をつきながら、得意先のおばちゃんに食べてもらえないか聞いたりした。まあ、数は多くもらってた方なんだろうな。
『中村さん、甘いモノは嫌いですか?』
瑠璃にそう聞かれたときもとっさに『苦手』と答えてしまった。
もしかしてもらえるんだろうか?初めてのバレンタインだからなぁ。けれどもあんまり余裕のない彼女にお金を使わせたくないし...
相変わらずキス止まりでなかなか清い交際を続けてるオレとしては、長く一緒にいられる土日なんかは、ちょっと辛いモノがあるので、最近はなるべく二人で出かけたりするようにしている。やっぱりまずいだろう?未成年と交際してて、手を出してたら...条例っていうのもあるしな。我慢は後何年続くかってとこだ。
今まで養育費にのけていたお金はそのまま積み立てることにした。何にいるかもわからないし、生活費は瑠璃のおかげでずいぶん切りつめられたし、彼女がいるからあまり飲みにも行かなくなった。深沢の結婚式に連れて行ってからよけいに誰も誘ってこなくなったしな。
それでも余ったお金でたまに瑠璃に何か買ってやろうとしたら、よけいに拒否された。はっきり言ってオレは瑠璃に何かしてやりたくてしょうがないんだ。瑠璃の喜ぶ顔が見たいから...だからオレは最近イベントを利用するようになった。クリスマスにも瑠璃に似合いそうなコートを買った。いつも学校指定のウインドブレーカーしか着ていないんだからな。併せてマフラーと手袋も添えたりした。自分だけ申し訳ないっていう瑠璃がかわいかった。瑠璃からは手袋とクリスマスの手料理があったからそれで十分だったし...ほんとは、また泊まっていくと言った瑠璃を送っていくのが辛かったんだけどな。あのとき...つい、彼女のアパートの手前で止めた車の中で、思わず濃厚なキスをしてしまった。
しばらくはぼーっとしてる彼女を抱きしめて、お互いの気持ちが収まるのを待つ時間がどれほど長かったか...
やっぱり、夜に二人っきりになるのはよそう。
「おはようございます!起きてました?」
2月14日、バレンタインの朝、元気よく瑠璃が入ってくる。買い物してきた荷物を手際よく冷蔵庫に放り込んでいく。
「ああ、おはよう...」
ぼーっと起き抜けに一服していたところだった。何も言わずに台所に立ってコーヒーを入れてくれるのをまたまたぼーっと見ていた。
コートを脱いだ彼女の今日の格好は薄い色のモヘアのセーターに膝丈のグレーのプリーツスカートだ。普段は制服や、ジーンズが多いのでなかなか新鮮だ。そこからすらりとのびた黒いタイツをはいた足がまた...いかん、いかん、思考がおじさん化してしまうところだったじゃないか。
「今日はどうされるんですか?」
相変わらずの敬語でにっこり笑って話しかけてくる。
「映画でも見に行かないか?瑠璃、この間みたいのあるって言ってたじゃないか。ほらDVDで見たやつの続き。」
「3が公開してるやつですか?いいんですか?うわぁ、うれしいなぁ!」
無邪気に喜ぶ瑠璃を見てるだけでオレの方もうれしくなってしまう。
「あ、でも...」
「ん、どうした?」
「せっかくのバレンタインだから、あたしごちそうつくろうって思ってたんだけど...あたし、そのくらいしかできないし...だって、中村さんチョコ嫌いなんでしょ?」
「いや、少しぐらいなら大丈夫だよ。ごちそうも普段から作ってもらってるし...映画、見に行こう。」
そういって連れ出した。最近ほんとに辛い。休日に部屋に二人だけっていうのは...それこそ夜になって、夕食にビールでも飲んでアルコールが回るとますます帰したくなくなるし、酔いに任せてとんでもないことを口走りそうだ。
というわけで車を出した。普通のセダンだけど、ちょっとだけいじってるから古くなってもなかなか売る気にならない。前から乗ってる車だから、家族との思い出もあるけれども...
最近は瑠璃を送っていったり、二人で出かけるのに、前より乗ってる気がする。
電車なんかの公共機関を使うと間違いなく瑠璃の学校関係者に見られる。車だとそこそこ大丈夫だし、まあ、親戚のおじさんとでも言われようがそれはかまわない...ただ、瑠璃にいやな思いさせたくないだけなんだ。
だからといってクリスマスは失敗した!送り際に可愛い顔して肩にもたれてこられたら、さすがに理性もどっかに飛んでいってしまった。だから車もやばいんだよなぁ。
ハーバーランド(神戸)のモザイクの下の駐車所に車を放り込んで、その中にある映画館までを並んで歩く。Shopもさすがにバレンタイン色が強い。
こんな時カップルなら手をつないだり、腕を組んだり、肩を抱いたりするんだろうけど...そういうのに彼女があこがれてるのもわかってるんだけど、それは出来ないよな。
「何か飲むもん買ってくるね。」
映画館に入って席を選んで座ったあとそういって瑠璃が席を立った。オレはシートに深く腰掛けて足を組んだ。ねなけりゃいいんだけど、ここんとこ寝不足だし...
「あの、中村さん、お願いがあるんですけど....」
「ん?」
彼女が買ってきてくれた温かいコーヒーに口を付けながらドキリとするのを隠しながらそちらを見た。済まなそうな瑠璃の顔。
「高校の同級生が来てて、出会ったときに一緒に見ようって誘われたから、思わず彼氏と来てるって言っちゃったんです。」
「え...」
「ごめんなさい!」
「いや、別にオレはかまわないけど...」
オレは構わないさ、けど瑠璃がそのせいで変に見られるのはいやなんだ。
「もしかしたら、見に来るかも知れません...あの、その時真吾さんって名前で呼んでいいですか?」
「あ、ああいいよ。」
ぱぁって顔を明るくして瑠璃が笑った。そのくらいのことで喜ぶの?けれどもオレなんか見せていいのかな?
映画はもう、すごかった。大画面で見るとDVDで見るのとはかなり違うな。眠気は起きなかったよ、もちろん。けれどエンドテロップが流れる頃にはちょっと周りが気になりはじめた。
実はオレ、緊張してる。まだ瑠璃の母親や友達にも会ったこともないし、紹介されたこともない。今まで彼女が部屋に来る一方だったからよけいなんだけどな。オレの方はちゃんと同僚の結婚式で紹介済みなんだが...
別に卑屈になる訳じゃないけれども、15違うんだから。オレはバツイチで、会わせてもらえないけど子供だっているんだ。瑠璃はそれを知ってるが、瑠璃の知り合いにそんなことは言えないし、だからといって必死で手を出さずに頑張ってますとも言えないじゃないか?
「君島さん、この人、カレシって?」
通路側から声をかけられて振り向くとそこには背の高いストリート系ファッションに身をつつんだ男の子が顔を出した。男の子といってもおそらく瑠璃と同い年の17歳なんだろう。こちらを見る目がやけに挑戦的だ。
「そ、そうよ。真吾さん、同級生の寺田くん。さっき言ってた。」
「はじめまして、中村です。瑠璃がいつもお世話になってます。」
こういうとき、営業のキャリアが生きるんだよな。にっこりと愛想よく笑いながら相手に威圧感与えたり、なんて小技使ってしまう。
「は、はじめまして...君島、おまえのカレシって社会人?」
おまえって、人の彼女をおまえ呼ばわりか?それに目の前にいる人間に対してカレシっていうか?ったく最近の若い奴はなってないな、なんてついおじんくさいことを思ってしまう。いかん、気持ちは20代だ、くそっ!
「うん。」
「なんかすっげぇ上に見えるんだけど...?」
堂々と挑んでくる目、けんか売ってんだろうな、こいつ。
「そうだけど...なに?」
瑠璃が困惑した顔で聞き返す。
「いや、どこで出会ったのかなって、気になってね。」
「それを君に説明しなきゃいけないのかな?」
あの説明出来ない出会いを思って下を向いてしまった瑠璃の背中を軽く撫でてやりながら代わりに答えた。
「普通、まさかって思うでしょう、中村サン。」
「まさかだったらこんなとこには来てないよ。一応これでも独身だしね。それにそういう言い方はわたしより瑠璃に失礼だと思わないか?彼女はそんな娘じゃないだろう。」
挑戦的だった目が泳ぐ。だめだよ、相手を攻撃するのに、大事な人を傷つけちゃいけない。
「くっ、じゃあ、あんたに下心はないって言うのかよ!」
うう、痛いとこ突いてくれる。たしかに何にもない聖人君子じゃないよ。
「寺田くん!し、失礼なこと言わないで!な、真吾さんはあたしにとってすっごく大切な人なんだからねっ!」
オレがどう返そうかと考えてる間に瑠璃が間に入って寺田を睨み付けた。
「い、や...そんなつもりじゃ....」
瑠璃の勢いに押されたのか彼は口ごもった。おそらくいつも大人しい瑠璃が言い返してくるなんて思ってもなかったんだろう。それよりも瑠璃は寺田の気持ち、あんまり気付いてないんじゃないのか?見りゃわかるだろう、こいつが瑠璃のこと好きで言ってるってこと。かわいそうに...
って、喜んでるのかオレは?いつでもふさわしい奴が現れたら瑠璃を解放してやるつもりじゃなかったのか?まあ、この男はまだちょっと子供すぎるけどな。オレだってこのくらいの頃はまあ、似たようなもんだったさ...あと4,5年、もすればしっかりしてきて、守れるぐらい強くなれるはずだ。あの三谷のようにな...
「寺田くんって言ったね。心配しなくても、わたしは瑠璃の保護者のようなものだから。」
「本当ですか!?」
思わずそう言っていた。目の前の男の顔がぱっと明るくなり、振り向いた瑠璃が泣きそうな顔になっていた。
「帰ろう...」
瑠璃はぽつりとそう言うと、くるりと背を向けてオレの腕を引っ張っていく。急いでコートを掴んで後をついて行った。
食事をしようと言ったが、瑠璃は食べたくないと言った。じゃあどこに行きたいかと聞いたら車に戻ると答えた。下を向いたまんまの彼女は何かをこらえるように膝の上でぎゅっと手のひらを握りしめていた。
瑠璃に言ってもわかってもらえないだろうけど、この歳の男が若い女の子と付き合ってて、何もしてないなんて同じ男だったら絶対に信じないんだよ。
一瞬考えてしまった。振られたと思いこんだあいつがいらぬ噂を流せば瑠璃の立場は悪くなる。母親にも何か言われるだろう。それはすぐにでも挨拶に行ってもいいとさえ思っている。けれども学校側に知られたりしたら、また変な目で見られて、下手したら奨学金すら危なくなる。
やっぱり今日は家で大人しく我慢してる方がよかったんだろうか?
「じゃあ、家に向かっていいのか?それとも瑠璃の家に送っていった方がいいか?」
まだ首を振っている。
「瑠璃?」
締めていたシートベルトをはずして彼女の方を覗き込む。泣いて、ないよな?
「真、中村さんは、あたしの保護者だったんですか?」
「瑠璃、ああでも言わないと...」
「保護者って、キ、キスしたり、抱きしめたりするんですかっ!?」
きっと持ち上げた瞳には大粒の涙がのっかってた。
「あたし、保護者のカレなんていらない!あたし、あたし、やっぱり迷惑なんですか!?」
え?迷惑って、オレが瑠璃のことを?そんなはずないに決まってるじゃないか。なのになんで?
「だって、泊まっちゃだめだし、キス以上はしてくれないし、す、好きってあんまり言ってもらえないし...あたし、やっぱり迷惑なんですよね?」
「そ、そんなことはないよ。瑠璃にはいっぱい助けてもらってるから、だから...」
「だって、それは家政婦さんとしてでしょう?あ、あたし、本当の彼女になりたいの!中村さんの恋人になりたいの!」
覗き込んだままのオレの首に瑠璃が飛びついてきた。シャンプーの甘い香りに混じって、チョコの香りがふわっと匂った。バレンタインの匂いだよな。
「そんなことしなくっても、瑠璃はオレの彼女だろ?」
「だって、避けてるでしょ?中村さんあたしと二人っきりでいるのすごく避けてるんだもん!」
「それは...いっただろう?オレと君とじゃ年齢が違いすぎてるから、誤解されないようにだな...」
「そんなの、関係ないっ!あたし、な...真吾さんが好き!大好き!真吾さんの部屋に泊まってもいいって思ってる、そのままずっと真吾さんの部屋に住みたいって思ってる。あたしの全部真吾さんにあげたいって思ってるっ!」
回してた腕をおろすと、鞄の中から小さな箱を取りだした。その箱をがさごそと開けると手作りらしいチョコを一つ取り出して自分の口に放り込んだ。見た目いかにも手作りっぽいそのチョコ。ああ、この香りだったんだ...
「瑠璃?ううっ!!」
再び腕を回され瑠璃に唇をふさがれてしまった。柔らかくて暖かい瑠璃の唇からとろりと甘いチョコが運ばれてくる。熱い瑠璃の舌とともに...
「ん、んっ...」
逃げられなかった。一度味わってしまえば、これほど甘いキスはない。お互いにチョコの味がなくなるまでひたすらむさぼりあった。瑠璃がこんなキスをしてくるなんて思っても見なかったから、オレはひたすら瑠璃を求めて...手が勝手にシートを倒し、瑠璃の体をきつく抱きしめ、その手をセーターの下から忍ばせ下着の上からその胸を揉みし抱いていた。
「あっ...真吾さん...」
痺れた脳髄に甘い瑠璃の掠れた声が響いてくる。その声はオレを興奮させるほど色っぽかった。
「瑠璃、好きだよ...いつだってこうしてオレのモノにしたくって...」
「して...真吾さんのモノになりたい...」
もう止まらないんじゃないかと思った。腰のラインをさすらっていた手を下に降ろして、スカートをたくし上げようとした瞬間びくりと瑠璃が震えた。ちらっと顔を覗くと、ぎゅうっと目を閉じていた。そのまぶたはかすかに震え、不安に揺れている。
はじめてなんだよな、瑠璃は...
そっと体を起こし、それから瑠璃の体を優しく抱きしめる。興奮してしまった下半身には申し訳ないが白昼こんな駐車場ですることじゃない。
「瑠璃、怖かった?」
そう聞いてもひたすら首を振る。
「怖くない、だって真吾さんがわたしにひどいことするはずがないもん。」
オレの背中に回した腕に力が入る。
「瑠璃...」
その手をそっとはずして運転席に戻る。
オレの部屋に向かっていた。
だけど心の中でまだもう一人のオレが叫んでいる。止めておけ、相手は15も下の高校生だぞ、と...
部屋に戻ると瑠璃が何も言わずにバスルームに飛び込んだ。
オレはもてあました気持ちを抑えるように煙草に火をつけた。
ほんとうにいいんだろうか?瑠璃を抱いて、自分の物にしてしまっても...
「中村さんも、入りますか?」
カチャリと開いたバスルームからバスタオルだけ巻いた瑠璃が出てくる。色白のその肌が光って見えるほど若い肌だ。以前に比べると少し肉付きがよくなってきて女らしい体型になってきたとは思うが、それは今まであまり食べられなかのが、うちに来始めて食生活が良くなっただけのことだ。
「ああ、入ってくるよ。」
シャワーを浴びながらも、迷う心を振り切れずにいた。
今のオレにあるのは瑠璃を思う気持ちと罪悪感だ...もっと割り切って考えられればいいのに、ただ愛しい想いだけで抱けなくなってしまってる。まあ、その気持ちがあってこそ、ここまで自制してこれたんだが...でなければ、何度押し倒してそのまま抱いてしまおうとしたことか。
鏡に写る自分はちょっと見には30には見えないかも知れないが、中味はしっかり三十路の男だ。何人もの女性を抱いてきて、セックスに躊躇するわけでもない。処女の女が初めてなわけでもない。ただ、自分に自信がないんだ。自分が瑠璃にふさわしいかどうかなんて...たった10万ぽっちのお金で瑠璃を縛り付けていないか?オレは瑠璃が堂々と紹介できる相手か?オレは...恋愛に失敗して、結婚に失敗した男なんだ。
取りあえず腰にバスタオルを巻いてバスルームから出た。
「瑠璃、やっぱり今日は...瑠璃?」
オレの布団に潜り込んで寝入ってしまったんだろう。緊張してたからなぁ。瑠璃のことだ前の日から一生懸命考えて、どうやってオレにそれを伝えるのか必死で考えてたんだろうな。チョコも作ってたみたいだしな。
「瑠璃...そんなに急ぐなよ?オレはいつまでだって待つからさ...」
寝息を立てる瑠璃の髪を撫でてやる。
あのとき、駐車場でオレに迫ったときはしっかり女の顔をしてたくせに。
「まるで子供じゃないか...」
無邪気な寝顔にそっと唇を寄せる。
「今年のバレンタインはあのチョコキスで十分だよ。」
取りあえず目が覚めるまでは待っててやろう。目が覚めたらすぐに送って行けるようにと、服に着替えて瑠璃の布団の横に腰を下ろす。
オレも無理しない。欲しいときには抱くさ。けれど今がその時じゃない気がする。
「瑠璃、おまえが大切なんだよ。」
オレはまた煙草に火をつけた。
「う...ん、真吾さん...」
寝返りを打って俺の名を呼んでくれる。ちょっと色っぽくってびっくりするけど、布団から抜け出た白い肩に布団をかけ直してやる。
「ちょっともったいなかったかな?」
オレは苦笑しながらくわえたままの煙草の紫煙を見つめた。
「もう、真吾さんの馬鹿っ!どうして起こしてくれなかったの?」
ああ、なんで寝ちゃったんだろう?あたし...
そりゃあ昨日はなかなか寝れなかったわよ。でもね、寝ちゃうこと無いじゃないのぉ!
「いや、だって瑠璃すごく気持ちよさそうに寝てるからさ。」
真吾さん(もうこう呼ぶことに決めたの)が煙草をくわえたまま笑っている。
また子供扱いだわ!もう...せっかく決心してきたのに。
「せっかく泊まるつもりで来てたのに...」
仕方なく差し出された服に着替える。
「わかったよ、なぁ腹空かないか?夕飯まだなんだけど。」
そ、そうだった!材料は買ってきてるから大丈夫だよね。
「ちょっとまってね、すぐ作るから!」
急いで台所に向かった。ご飯食べようって言ってくれてたのに、あのときあたしが怒って帰って来ちゃったからなぁ。
あれ?真吾さんなんでそんな後ろに立つの?そう思った瞬間、後ろから抱きしめられていた。
「瑠璃のこと、もうちょい熟したら食べるから、待ってなさい。」
あたしは真っ赤になりながら頷いた。
嫌われてる訳じゃない。あたしがもっと大人になるの待ってくれてるんだよね。
「賞味期限の間に食べてね。チョコにだって期限があるんだからね。」
振り向いて自分からキスをする。
「真吾さん、大好き♪」
小さくオレもって聞こえて、すっごくうれしかった。
取りあえず関西物書恋盟のバレンタイン物として、どれを書こうか悩んだあげくのこの二人です。
相変わらず清い関係の二人。こんなカップルが居てもいいんじゃないかなぁなんて思ってしまう今日この頃...(遠い目〜)でもきっと大願成就するまでこれもシリーズとして書いちゃうんだろうなぁ...
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